厚生労働省は、精神障害事案の労災審査の適切・迅速化を目指し、認定基準改正に向けた検討を行ってきたが、7月4日に「心理的負荷評価表」の見直しについて盛り込んだ報告書を取りまとめた。
労災の認定には、「業務遂行性」と「業務起因性」、要するに業務の遂行中に業務に起因して発生した災害であることが前提であるが、精神障害については、更に以下の要件が必要とされている。
今回見直しが検討されている「心理的負荷評価表」とは、上記要件の②において、客観的に心理的な負荷を評価するためのツールであり、厚生労働省がインターネットで公開している。
心理的負荷評価表では、ある出来事に対し、その状況や出来事の度合に応じて心理的負荷を「強」「中」「弱」に分類しており、原則「強」に分類されると心理的な負荷が大きい(=上記認定基準の②を満たす)とされている。
※「中」であっても労働時間等の状況によって「強」になる場合もある。
※心理的負荷の強度は「主観的」ではなく「同種の労働者が一般的にどう受け止めるか」という観点から評価する。
※詳細は以下リンク先を参照
厚生労働省PDF
見直しが検討されているポイントは大きく以下の通りである。
そもそも、なぜこのような検討がされているのだろうか。それは、近年精神障害による労災認定の請求件数や支給決定件数が増加してきている点や、社会情勢の変化等の背景がある。
昨年度1年間では、請求件数、支給決定件数ともにそれぞれ2年連続、4年連続で過去最多となった(請求件数:2,683件、支給決定:710件)。
ここからは筆者の予想だが、精神障害の請求件数は増えているが、現行の心理的負荷評価表のように事例を具体的に上げ、それにあてはまれば「強」という風に判定する流れだと、その他の事例に対応することができず、明らかに業務に起因するにもかかわらず認定できない例があるのではと思う。
カスタマーハラスメントはその良い例で、既に心理的負荷評価表に明記されているハラスメント(セクハラやパワハラ)の登場人物である「上司」や「同僚」ではなく、新たにカスタマー(顧客)からのハラスメントによって精神障害を発症する人も目立つようになってきたのだと思う。
今後の動向に注目。
労働新聞第3409号「精神障害 請求・支給決定が過去最多」